何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「月斗さんありがとうございました。」

一人の男が、深々と月斗に向かって頭を下げた。
彼は月斗の仲間の一人で、彼らは月斗とつるんでしょっちゅう町で悪さを繰り返していた。

「月斗さん。さすがですよ!コイツを逃がすために、わざと捕まって、しかも自分まで城から脱走するなんて。」

月斗の隠れ家では、仲間達が月斗を囲んで褒め称えていた。
月斗はこの山奥のボロボロの小屋に住んでいて、もちろんこの場所を知っているのは、月斗の仲間達だけ。
月斗は城に捕まっていた仲間を逃がすために、今回はわざと捕まったのだった。
まさか、あそこに天使教が現れるとは思っていなかったが、月斗はそれを利用して脱走を図り、仲間も逃がす事に成功したのだった。

「あんな場所に長居は無用だからな。」

コンコン
その時、彼らの小屋をノックする音が聞こえた。

「だ、誰だ…。」

月斗と仲間達は眉をひそめて、警戒するように扉の方へと視線を移した。
こんな場所にある小屋に、人が訪ねて来る事なんてまずない。
月斗も警戒をし、身構えた。その瞬間…。

「あのー!!」

外から聞こえたのは女の声。

———この声は?

どこか聞き覚えのある声に、月斗は警戒心を解いて、扉をゆっくりと開けた。

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