私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
(月鵬の回顧録)
私と、カシラと、柚様との出会いは、私が十歳の時だった。
カシラが十二歳。柚様は、十一歳だった。
私は当時、暗殺者だった。
どこからか攫われたのか、売りにでも出されたのか、記憶にないくらいに幼い頃から、私は暗殺集団の中で、必死に誰かを殺す術を習った。
そして、誰かに命じられれば、すぐにでもその行動を取れるように、徹底的に体に教え込まれていた。
だから、倭和の屋敷で襲撃が遭ったときにも、ゆりちゃんの言葉に咄嗟に反応してしまった。
それほど、幼い頃に植えつけられたものは取り除けないものだった。
あの頃は、あの場所にいるのが嫌で嫌で、逃げ出したくて――でも、できなくて。心を失くしたふりをしながら、奥底で泣いていた。
そんな私を救ってくれたのが、カシラだった。
当時、私の所属していた暗殺集団は、三百人程度の、比較的大きな盗賊団に雇われていた。
盗賊団は、盗めるものならなんでも盗んできた。
宝、食料、ドラゴン、ドラゴンの卵、人間――。それこそ、なんでも。
その日、盗賊団はあるものを盗んできた。
宝と、コアトルの卵と、少女。
どこかの山賊の砦に押し入り、たくさんの財宝を奪ってきたようだった。はしゃぐ盗賊団を、私は、無感動に見ていた。
眼の端に、牢屋の中に入れられ、不安そうな表情を浮かべては、泣くのを必死に我慢している少女が見えた。
この子もきっと、どこかの遊郭へ売り飛ばされるんだろうな、と、感慨もなく見ていた。
そこへ、突如として、悲鳴が上がった。