私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
「あの、私はずっとこの城に、幽閉されるように生きるのでしょうか?」
「幽閉はしないけど、自由に外に出歩く事は、おそらく出来ないと思う」
「そうですか」
元の世界にも帰してもらえない。自由に城の外にも出られない。哀しさから絶望が襲ってきて、急にふつふつと怒りが込み上げてきた。
(冗談じゃない)
勝手にこんな世界に呼んでおいて、兵器扱い? おまけに軟禁生活が一生続くの? そんな人生まっぴらよ。
皇王子が就任したらとかのんびりと構えてる場合じゃない。さっさと帰る方法を探さなくちゃ。
そこで、ふと思った。
皇王子自身は、どう思ってるんだろう?
今の話だと、そうしたいのは、碧王と右大臣ということだもん。皇王子自身はどう思ってるんだろう?
もしかしたら、そんな事はしたくないかも知れない。
そうだったのなら、私の味方になってくれるかも。
「皇王子ご自身は、どう思ってるんですか?」
「私?」
王子は驚いた表情をして、考えるように眉を顰めた。
「そうだな――」
王子は顔を上げた。私を真っ直ぐに見つめる。
「私は、抑止力だとしても、武器を持つことは望まない」
強い瞳でそう言い放った。
(良いじゃん! 味方になってくれるかも!)
「それは何故?」
「強力な武器を持てば、戦を呼びかねないからだ」
「というと?」
「貴女は先の大戦の起因をご存知だろうか?」
「えっと、確か、仲の悪かった千葉と爛がきっかけで」
「うん。互いの国がにらみ合いの膠着状態を続けていた中で、爛が岐附に軍事力の助けをこうた事が原因だ」
「つまりは『軍事という力』を求めた事がきっかけだったと?」
「そういうことになる」
皇王子は深く頷いた。
「確かに、力を持てば抑止力にはなりますが、突然持つ力は、逆効果であると言えるのかも知れませんね」
なんて、もっともらしい事を言ってみる。私ってば頭良い人みたい。
皇王子はゆっくりと頷いて、
「特に勢力が拮抗していたり、情勢不安の中では破滅を呼びかねないだろう。拮抗してる場合は、その力を危惧し、近隣諸国が手を結ぶ可能性もある。大戦が終わったとは言え、永国、倭和国意外は今もまだ不安定だ。特に、経済において世界的に不安定な今は、人心も荒れやすい」
「では、私の使い道はないのではありませんか?」
(お願い! ないって言って! 帰す手立てを考えるって言って!)
内心冷や汗もんだったけど、私は出来る限り自信たっぷりに言った。王子は押し黙る。私はひりひりした思いで、王子の言葉を待った。
「私自身は、武力は望まない。だが、私は王ではない」
「あなたが王になったら、そうなさったら良いじゃないですか」
「王の座に就いたとしても、私は王にはなれないのだ」
どういうこと?