私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
* * *
私と月鵬さんはローブを着て、フードを被って街を歩いていた。顔や格好を隠さないと、女だとバレて、面倒なんだそうだ。
提灯を持って、すっかり明かりのなくなった街を行く。
明かりない街は、暗くて、静かで、不気味だ。
よくよく見ると、路地裏には、誰かしらが寝っころんでいる。子供もいたりして、なんだか可哀想になって、ついじっと見ていると月鵬さんに注意された。
あまり見ると、物乞いにきたり、恐喝されたりするから見てはいけないらしい。
可愛そうだったけど、私は見るのを止めた。
(王子達は、こうなってることを把握してるのかな?)
誰が王になるのか分からないけど、ちゃんとこの人達が生活できるようにして欲しいな。
ぽつりと私がそう思ったとき、月鵬さんがやけに真剣な声音を発した。
「ゆりちゃん」
「はい?」
暗くて顔はよく見えないけど、なんとなく真剣な顔つきなような気がする。
月鵬さんは、私を振り返った。
「先に言っておくわね」
「はい」
「あなたには少し、衝撃的というか、刺激的というか、そういう場面に出くわすかも知れないけど、気を確かにね」
「え?」
その言葉の意味を、私はすぐに理解することになった。