私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
「――と、いうことみたいです。ここから先は、潰れていて読めません」
「てことは、嬢ちゃんの中にある魔王は、あのエネルギーは魂の集合体ってことなのか? この書物の内容が本当だったらだが……」
「今のところ、確かめる術はありませんけどね」
「でも、けんちゃんは本物だと思ったんでしょ?」
花野井の顔色を読み取った鉄次の言葉に、花野井は一瞬驚いた。
そして、確信を持ったように、にっと笑った。
「この一節な『勝手に魂と体を吸い上げていく事態となった』『触れたとたんに魂を体ごと持っていかれる』この感覚に、覚えがあんだよ」
花野井の言葉に、一同は目を見張った。継ぐ言葉に耳を傾ける。
「魔王を召還しようとした時に、あの儀式をやった時にな」
「では……」
「十中八九、本当だと思うぜ。勘だがな」
強気な笑みを浮かべる花野井に、一同はふっと笑みを送った。
それは信頼を表すものだった。
「じゃあ、もしかしたらゆりちゃんの中に魔竜がいるのかも知れないのね。魂だけだけど」
ぽつりと独り言をこぼした月鵬は、考え込むように顔を顰めた。
「まあ、そんなの今考えたってしょうがないじゃない」
鉄次が流すように言って、月鵬が「それもそうね」と、自分を納得させると、鉄次は、一瞬気まずそうに顔を曇らせた。