私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
「竜王機関が、竜王書第三巻を所有していた理由は、招々によれば、どうやら、二百年前、この巻物を処分しようとした者がいたらしく、それを防ごうと、竜王機関が中央管理局から盗み出したようです。誰がそんな事をしようとしたのかは、伝わっていないらしいので、分からないそうですが、竜王機関幹部の間では、この第三巻を外部に、特に国家に渡してはいけないと伝わっていたようです。俺からは以上です。」
「分かった。ご苦労」
亮が報告を終わらせると、皆は鉄次を見た。
報告があるかどうかの確認で視線を送ったのだが、鉄次は困惑した表情をし、次の瞬間へらっと苦笑した。
「あ、あのねぇ。実はあたし……失態しちゃった!」
「は?」
鉄次の茶目っ気溢れる告白に、いの一番に反応したのは、他ならぬ亮だ。
その声音には、すでに怒りが含まれていた。
「あのねぇ、実は……その巻物、見られちゃったのよねぇ。そんでもって、色々、知られちゃって……」
へらへらと苦笑を繰り返す鉄次に、亮は怒りをぶちまけた。
「誰に!? 何を!? 情報は的確にっていつも言ってんだろ!」
「もう! 急かさないでよ! せっかちなんだからぁ! 今言おうと思ってたのぉ!」
「ぶるなカマが! さっさと報告しろ!」
「ひっど~い! そういう言い方ってないわよ! 差別よ差別!」
「まあ、まあ、落ち着けって。鉄次、ゆっくりでいいからちゃんと説明しろ。亮も、話を聞く前からケンカ腰じゃ、報告したくてもできないだろ」
花野井に注意されて、シュンと黙り込む二人を見ながら、月鵬はこの二人の前だと、カシラってしっかり者に見えるのよねぇ……と、暢気に思った。
鉄次は、改めて話し始めた。
それは、鉄次が巻物を受け取りに、岐附の甲斐凋(かいちょう)という町に行った時だった。