私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~
第十三章・黒田の過去・後編
黒田はゆりに、簡略的に初陣戦を語った。
風使いへの復讐を果たした事、異変に気づき、天幕へ押し入った事、脅しはしたが、結局東條の後押しで総指揮を任された事。功歩軍を罠に嵌めて勝利した事。
援軍問題で捕虜を使った事は、簡略的な中にあって、もっとも簡潔に語られたが、大よその筋は通した。
そして、父と慕った男の死も、黒田はあっさりとした口調で語った。
心中では、きゅっと心臓が摘まれた思いがしたが、それを表に出す事はしなかった。
それを出してしまえば、涙ぐむ自信が彼にはあった。
「……亡くなったんだ……」
ゆりが心痛を表情に出した。
それを見て、黒田は小さく「うん」と頷いた。
「……ご病気だったの?」
「うん……それがね。あんまり、よく分かってないんだよね。肺の病気だったんじゃないかって言われてはいるけどね」
「そうなんだ……」
「まあ、でも原因不明の病は結構あるからね」
「そっか」
浮かない顔をするゆりを気遣って、黒田はわざと明るい声を出した。
「まあ、それで、初戦はぼくの天才的な閃きによって幕を閉じたわけさ!」
「天才か……」
ゆりは苦笑を返して、ふと思い出した。
結局、黒田が自分に触れない理由はなんだったのだろうか? ゆりには、ある可能性が浮かんだが、それを口に出すのは憚れる気がした。でも、おずおずと口にする。
「あのさ……クロちゃんが私に必要以上に触れない理由って、お姉さんや、蓮さんの事に関係があるの?」
眼の前で、大切な人が陵辱され、殺された。
そのせいだろうか――?
しかし、黒田は苦笑する。
「それも、あるんだけどね」