私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~
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図書館に着くと、真っ先に『入国証について』という本を手に取った。
入国証に、谷中という苗字が書かれていなかったのが気になったからだ。
その本によると、苗字を名乗れるのは、それなりの地位にいる者でなければならないと書かれていた。
それなりの地位とは、王族、貴族は当たり前として、将軍、三関、文官などの公的な任務についている者だそうだ。
ただ、武官は三関以上の者にしか与えられないそう。
国によって違いはあるそうだけど、大体は三関の地位についてから自分でつけるか、人につけてもらうかして名乗り、入国証も新しい名前で再発行するそうだ。
発行は公務奉(こうむぶ)という国の施設があり、そこに入国証を持って行くのだそう。いわゆる役場だ。
国によって違うけど、公務奉が町にしかないところもあり、村の人は町まで出向くことになるのだとか。
ちなみに千葉が一番多く村に設置されているらしい。
一通り読み終えて、本を元に戻した。
(よし、バイトを探しに行こう)
大通りへ降りると雑貨屋さんや、食べ物屋などを覘いた。
店のどこかに求人が出てないか、店内外をそれこそ嘗め回すように目を凝らしたけれど、どの店も求人広告は出ていない。
その度に店員さんに、バイトを募集してないかと聞いて回ったけど、どこも撃沈だった。
「はあ……」
十五軒ほどまわったところで、深いため息が出てしまった。
断られるのって、結構きつい。
(どこかないかなぁ……)
「うっ!」
低い音がお腹の中から鳴った。
「お腹へった……」
ウロガンドをポケットから取り出す。
「げっ、もう午後二時じゃん」
いつの間にかお昼をとっくに過ぎてる。そりゃ、お腹も鳴るよ。
「……シュシュルフランにでも行こう」
ん?
そうだ、シュシュルフラン! あそこって、いつも店長一人だけだし、もしかしたら雇ってくれるかも!
私は期待を込めて駆け出した。