私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~
* * *
上空で留まった場所は、野営地からそう遠くない所だった。
野営地から十五分くらい飛んだところかな。
下にはなにやら、小さな城砦のような物が見える。
「ここは?」
「盗賊団の根城であり、ぼくが生まれたところ」
「え?」
それだけ言うと、クロちゃんはシンディを旋回させて、野営地へと戻った。
だけど、野営地には下りず、野営地から少し離れた森の中に降り立った。
クロちゃんは私をシンディから下ろすと、二つ並んだ岩の上に座るように促した。
私の隣にクロちゃんが腰をかける。
私はさっきの言葉がどういう意味なのか訊ねたかったけど、罪悪感がそれを拒んでいた。
すると、クロちゃんは私に向き直った。
「ぼくが生まれてから、今日に至るまで――とは行かないかも知れないけど、ぼくの事を話すよ。キミが不安じゃなくなるまでね」
「……怒ってないの?」
「危険な任務についてきた事は怒ってるよ。もちろんね。でも、それも不安にさせたぼくの責任だろ?」
クロちゃんは自分に言うように言って、私の目を見据えた。
じゃあ、話すよ――と、言われた気がして、私はこくりと頷く。
「ぼくはね――」