私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~
第十二章・黒田の過去・中編~見裂ヶ原の戦い~・総指揮編
翌朝、開戦の火蓋が切って落とされた。
陸軍(地竜隊)同士がぶつかり合う中、こんな作戦上手く行くはずがないと、赤井は思っていた。
赤井は陸軍の四足竜隊に小関として配属された。
今ぶつかり合っているのは美章軍の喰鳥竜隊と、功歩軍の四足竜・喰鳥竜軍だった。
劣勢の中、踏ん張る喰鳥竜隊を見つめながら、赤井はにやりと笑んだ。
(まあ、良い。大敗しても、小僧と東條の責任だ。東條は責任を取らされ降格。そうなれば、自動的に私が昇進だ。まあ……それまでにあいつの命はないだろうけどな)
赤井の心は弾んでいた。
* * *
「クソッ! まだか!」
劣勢の中にあって、喰鳥竜隊は良く耐えていた。
能力者の殆どを隊に当てたため、攻撃を防げる者が多く、今のところ死者数はゼロである。しかし、それも限界に来ていた。
やはり数に利のある方が、いずれは上回ってしまう。すると、そこへドラゴンの角笛が轟いた。
「やっとか!」
美章兵は、ほっと息をつき、その瞬間功歩兵に矢の雨が襲う。
それを一瞬見届けて、格隊長が大声を張り上げた。
「退避!」
喰鳥竜軍は、一斉に踵を返して走り出した。
それと同時に、本軍も一斉に動き始めた。喰鳥竜隊と同じく、前ではなく、後ろの森に向って。
功歩軍の青蹴は、にやりと笑んだ。
青蹴は、昨夜の報告を思い出していた。