私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
* * *
泉を抜けると、もう日は傾きはじめていた。おそらく、三時は過ぎてる。
ぐううと、お腹が鳴った。
(ヤバッ!)
慌ててお腹を押さえたけど、ばっちり聞こえてたみたい。風間さんは振り返って、微苦笑した。
「すみません。お昼まだでしたね。この辺でお昼にしましょうか」
「す、すいません……」
「いえ。気がきかずすみません」
ぺこりと頭を下げて、
「この辺りになら、いるかも知れませんね」
ぽつりと呟いた。
なにが? と聞く前に、
「少し焚き火をしましょう。焚き木になりそうな枝を拾ってきます」
「じゃあ私も――」
「いいえ。谷中様はここにいて下さい」
言いかけで、ぴしゃりと釘を刺されてしまった。
「わかりました。今度は絶対動きません」
「そうして下さい」
にこりと笑いながら、風間さんは森の中に消えていった。
案外、言うよなぁ。風間さんも。いや、迷惑かけた私が悪いんだけど……。ばつが悪い気持ちで、私はすぐそこの湖を眺めていた。