私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
* * *
北国に住んでいる蛮天南というドラゴンの毛皮で作られたかなり薄での寝袋は、すごく暖かかった。むしろ、暖か過ぎるくらい。
この竜は、通常のドラゴンよりも高く飛ぶためか体毛に覆われていて、その毛はとても暖かく、北国に住む人達の殆どが冬になるとコートとして愛用しているらしい。
私は寝袋に包まれ、うとうとし始めていた。火の側では、風間さんが焚き火に小枝を放り込んでいる。
どんよりと落ちてきた瞼に身を任せた。
* * *
瞼の裏が白んできて、目を開けた。
空が明るくなっている。
「今、何時?」
上体を起こそうとして、はたと気づいた。寝袋だ。抜け出さなきゃ起きれない。寝袋から這い出た私に、おはようございますと風間さんが声をかけた。
「おはようございます。今って?」
「天秤の刻(六時)です。朝食をとったら出ましょう」
「はい」
返事を返して、なんだか違和感があることに気づいた。
焚き火の周辺に寝袋を敷いたような跡がなかった。大地は湿ってるし、苔もある。何時間も人の体重が乗ってたらつぶれるとかして跡が残るはずなのに。現に私の方は苔が押し潰されて削られている。
「もしかして、風間さん寝てないんですか?」
「火の番をしなければならなかったので」
風間さんは気にしたようすもなく、さらりと言ってのけた。
「いや、起こしてくださいよ。代わったのに」
「大丈夫ですよ。ありがとうございます」
風間さんはにこりと笑う。
そりゃ、火の番とか気づかなかった私も悪いけど、でも、私だって役に立ちたいのに。小さくため息をついた。
私って、迷惑かけてばっかなんじゃないのかな。