私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
* * *
賑わう町で、二つ部屋が開いていたのはラッキーだった。
従業員の中年の女性が簡易風呂を運んできてくれたので、それに浸かる。
着替えたところで、トントンと、ノック音が響いた。
「風間です」
(なんだろう?)
戸を開けると、優しい笑みを浮かべる風間さんが立っていた。
「どうしました?」
「今日は時間があるので、街を見て廻りませんか?」
街か。
そういえばいつも食事と寝るだけで、街を見て廻るなんてしたことなかったな。
「良いですね。行きましょう」
そう返事を返して、ふと気づく。
(これって、デート?)
頭を横に振る。
そんなわけないと否定しつつ、心が躍るのを感じた。
人間って現金だな。