私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~

「気持ち悪くないですか?」
「はい」

 短く答えて目を瞑る。そんな彼の背中を擦った。すると風間さんはすぐに目を見開く。何か言おうとして止めたのが見て取れた。

 これ以上言っても無駄と思ったのかも知れないし、案外気持ちがよかったのかも知れない。
 わからないけど、これには風間さんは何も言わなかった。

 暫く擦っていると、風間さんの目がゆっくりと閉じられる。うとうととしてきて、やがて健やかな寝息が聞こえ始めた。

(寝ちゃったか)

 ほっとした途端、私も眠気に襲われた。
 お腹に食べ物は入ってるし、船内は差し込んだ光で暖かい。

 見回すと、お爺さんも他の数人のお客さんもスヤスヤと寝ているように見えた。
(これで、私が寝ないわけにはいかないでしょ!)
 私は速攻で目を閉じた。

 やってくる薄闇は、赤々とした光を残していたけど、問題ない。私は即座に眠りに落ちた。
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