私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
* * *
暗闇の中で、ふと目が覚める。
太ももが軽く、すーすーとした。
ぼんやりしながら、確認すると、膝枕をしていた風間さんが居なくなっていた。
太ももはつい先程まであった熱いくらいの篭った熱気がなくなって、空気に触れて、寒々とした。
立ち上がって、ぼうとっする頭で見回してみると、すでに日は落ち、夜と呼べるほどに暗かった。
客室にはランプの灯が燈っているけど、明るいとはとてもいえない。
ふと足元を見ると、カンテラが置いてあった。カンテラのとなりには小型の檻がくっついていて、中には小さなドラゴンが入っていた。申し訳なさ程度の羽が生えた、トカゲみたいなドラゴンだった。
これ知ってる。
たしか、火打竜(サラファイア)だったかな。宿屋でランプに火をつけるときに使うらしい。私は借りたことなかったけど、宿屋のおじさんに借りに行ってた人を廊下で見かけたことがあるし、倭和でも柳くんが料理のときに籠から出してた。
私はカンテラを手に取って、檻を開けてみた。すると、火打竜が滑るように出てきて、私の手の甲に乗る。
「――ヒッ!」
気持ち悪い!
思わず悲鳴を上げそうになって、ぎゅっと口を結んだ。
乗られてる手の甲から、背中から、ぞわぞわ悪寒が這い上がってくる。鳥肌まで立ち始めた。
(ああ、もう。早くどいてぇ!)
祈りが通じたのか、火打竜は羽根をぱたぱたと動かした。でも、飛ぶようすはない。もしかしたら飛べないのかも。ってことは、自分でこのドラゴンをカンテラに入れなきゃならないってこと?