私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
「どれくらいお水飲んでないんですか?」
風間さんは頭を横に振った。
多分、船に乗ってから口にしてない。
中学生のとき、ひどい胃腸炎にかかって何度も吐いたときを思い出す。すっごい辛かったんだけど、そのときお医者さんに水分補給はしっかりして下さいね、脱水になるからってお母さんが念を押されてた。
風間さんも、こんなんじゃ、脱水になっちゃうよ。
私、なんで寝ちゃったんだろう。
風間さんの寝顔が安らかそうだから、時期に治まるなんて勝手に思って……。ちゃんと看ていなきゃいけなかったのに。
なにが、世話焼き女房よ。
浮かれるだけで、なんにもしてないじゃん。
暗がりの中で、よくよく見た彼の唇は、水分を失くして干乾びていた。
後悔が胸を突く。
これから風間さんが少しでも楽になるように何か考えなきゃ。