私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~

* * *

 お昼は風間さんが食べられそうな時を見計らって摂ったから、午後一時頃になった。ウロガンドにして牛刻。

 糒を、水で戻してお粥のようにして食べた。ちなみに朝食もその方法だった。船の上なので、火が焚けないからだ。
 その分ちょっとだけ時間がかかったけど、お腹に良い物の方が良いもんね。
 私は干し肉も頂いちゃったけど。
 だって、育ち盛りだもん、お粥だけじゃ足りないよ。

 昼間も風間さんは、若干眉間にシワを作りつつも、健やかそうにしていた。
 夕方までは平気そうで、四時頃に青白い顔になってきた風間さんは即座に偽薬を飲んだ。

 その頃から、少し肌寒くなってきた。
 
 船員さんがやってきて、入り口に戸をする。
 昨日はなかったのになぁ……なんてぼんやり思いながら風間さんを見ると、表情が曇っているような気がした。
 そこへ、お爺さんがやってきた。

「よう、お嬢さん」
「お爺さん、どうしました?」
「ちょっと良いかい?」

 言って、お爺さんは私を手招いた。
(なんだろう?)
 不思議に思いながら、立ち上がると、そっと耳打ちされた。

「嵐が来るぞい」
「え?」
「多分天候が荒れるじゃろ。船員が入り口の戸を閉めたじゃろ?」
「……はい」
「船が揺れると思うから、相方をよく見といてやれ」

 忠告されて、風間さんを横目で見る。
 風間さんはどこか真剣な表情をしていた。
 そうか、嵐が来るって分かって……それで、表情が曇ってたんだ。

「ありがとうございます」

 私はお爺さんにお礼を言って、お爺さんは側を離れた。
(また胃が荒れちゃうのかな?)
 風間さんの心配をしつつ、その横に座った。

「嵐が着たら、膝枕、しますか?」

 訊ねた私に風間さんは苦笑して、首を横にふった。
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