私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
風間さんは薄暗い闇の中で、辛そうにこちらを見た。
「横になるのと、座ってるのって、どっちが楽なんですか?」
気を使っていることを悟られないように、なるべく気楽な感じで訊いてみる。
「そうですね……」
少し言いよどんでから、苦笑交じりに答えた。
「横になる方が楽です」
「じゃあ、横になられたらいかがですか? 膝枕とは言いませんから」
そう訊くと、風間さんの顔が曇った。
なにやら思案するような表情をして、意を決したように私を見つめた。
真正面から見据えられて、ドキっとする。
「お願いできますか?」
主語がなかったけど、何を指しているのかすぐに分かった。
「はい。良いですよ」
返事を返して、膝を折る。
いわゆる女の子座りをして、太ももを軽く叩いた。
(さあ――ドンと来い!)
風間さんは、眉間にシワを寄せた。
その表情が、どこか恥じらいというか、屈辱というか、そんな想いを抑えているようにも見えた。
ゆっくりと私の太ももの上に頭を置いた風間さんは、そのまま背を向けて横になる。私は風間さんの背を擦った。
私は頼られた嬉しさでいっぱいだったけど、風間さんがどう思っていたのかは分からない。風間さんはすぐに瞳を閉じてしまったから……。
暫く擦ってると、眠気が襲ってきた。
がくりと寝落ちして、びっくりして目が覚める。
(いかん、いかん)
頭をブンブンと振って、目をこすった。
どれくらい寝ちゃったんだろう……。
周りを見渡すと、ランプに照らされた壁掛けタイプのウロガンドが目に付いた。大きさは普通の壁掛け時計と同じくらいだ。
時刻は、魚刻。午後十一時だった。
良かった。それ程経ってない。私が覚えてる時刻は十時五十分くらいだったから、十分だけしか経っていなかった。
ほっと一息ついて、風間さんを見る。
風間さんの寝息は聞こえなかったけど、安らかな顔をしていた。
(あれ、そういえば……)