私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~

 * * *

 宿に入ると、ドアにかけてあった鈴が鳴った。

「いらっしゃい!」

 カウンターの奥から元気な中年の女性が出てきた。インナーに薄ピンクのシャツを着て、ボタンを第二ボタンまで開けている。その上に淡いオレンジのレザージャケットを羽織っていた。下はカウンターごしで分からないけど、多分スカートだろう。首元にはピンクのスカーフを巻いている。
 太目の体系で、明るく快活そうな印象だった。

「二名様だね! 同じ部屋にするかい? それとも別?」
「別で」

 風間さんが答えて、女性は奥へ引っ込んだ。すぐに戻ってきて、鍵をそれぞれに渡す。

「部屋番号はそれに書いてあるから! ごゆっくり!」

 そう言って、女性はさっさと奥へと引っ込んだ。鍵には板がストラップみたいについていて、そこに番号が書かれていた。

「帳簿つけないんでしょうか?」

 永では宿ごとに名前を明記したのに、瞑ではつけないんだろうか? それともこの町だけ?

「瞑ではそれはしませんね。基本的に大らかと言いましょうか、ズボラと言いましょうか……そういう方が瞑には多いですからお国柄というやつでしょうかね」

 言って風間さんは苦笑する。
 なるほど……イタリア人みたいな人が多いってことかな。
 ……偏見?
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