私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
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乾物屋を出てから、地図を道具屋で購入した。
地図のことは私はさっぱり分からないので、風間さんに丸投げした。
それから四足竜を手配してくれるという、足運屋(そくう)というお店に行く。
足運屋とは、四足竜や騎乗翼竜を貸し出したり、購入したりすることができるところらしい。
お店は町外れにあった。
十分くらい歩くと、もう中心部からは離れてしまって、閑静な住宅街になった。そこからさらに三十分ほど歩くと、周りに建物はあまり見られなくなった。それからしばらくすると、もう建物は一切なかった。
小高い丘があるだけだ。もうしわけなさ程度の低木があるだけで、乾燥手前の黄朽葉色の葉が岩の隙間から覗いている。
海辺沿いの町にいたときは気にならなかったけど、瞑は永に比べると空気がすごく乾燥していた。
息熱竜がいるくらいだから、乾燥地帯が多い国なのかも知れない。
丘沿いを登っていくと、建物と、牛舎のような物が見えた。建物は、掘っ立て小屋のような造りで、日よけの柱が朽ちかけている。私達が泊まるボロ宿よりひどい。
反対に牛舎の方は、柱も太く、白く塗られ、石垣は丁寧に積み上げられている。鉄でできた柵はサビはあるものの、比較的キレイ。柵の奥は暗くて何も見えないけど、奥の方から何頭か、鼻を鳴らす音が聞こえた。
風間さんが古びた木製のドアをノックすると、中からゴツイ男が出てきた。
彼は厳つい顔で私達を睨んだ。けど、風間さんが客だと伝えるとすぐににこやかになった。
(現金だなぁ)
中には入らず、その場で契約して、私達は明日の朝六時に燦引を出ることになった。契約って言っても、紙の切れ端に風間さんが名前を書いて、(おそらくまた偽名)おじさんに渡し、前金で全額支払って終わり。拍子抜けするくらい、あっという間だった。
予算の都合上、ゲンインという町までの乗り合いになった。ゲンインは、次のそのまた次の町だ。
燦引、ヨウゲン、弦韻(ゲンイン)となる。
どうやら、弦韻まで行く人が多いので、そこまでとなったみたいだ。弦韻についたら、また足運屋を探して乗るということになった。
(これからまた、旅だ。山賊がいるらしいし、気を引き締めなくちゃ!)
意気込んだ瞬間、視界がずり落ちる。足の裏を石が転がっていく感覚がした。
(あっ、ヤバイ、転ぶ!)
突然、後ろに傾いた重心がピタリと止まった。先を歩いていた風間さんが、私の腕を掴んで転ぶのを防いでくれている。
慌てて体勢を整えた。
「大丈夫ですか?」
にこりと笑んだ首元に、赤い指輪が揺れた。いつもは服の中に隠れてるのに、さっきの反動で出たみたいだ。
「……大丈夫です」
風間さんの笑顔なんて、いつも見ているはずなのに。胸がどきどきして、そう返事を返すのがやっとだった。