私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
* * *
月明かりだけが差し込む薄暗い部屋の中で、風間は膝を抱えていた。手には、木の板が二つ握られている。
入国証(ゲビナ)だ。
鬱屈した表情で入国証を見つめていたが、やがてため息をつき、立ち上がる。
窓にもたれかかり、町を見渡した。窓ガラスに映る自分を見て驚いた。
(これが私か? こんなにも情けない顔をした男が……)
「ハッ!」
風間は鼻で笑う。
入国証を一瞥して投げた。風間は放物線を見ようともしない。そしてそれは、ベッドの上にぽとんと落ちた。
ギリッと歯軋りが鳴る。そして、情けない自分をふるい落とすように、風間は窓ガラスに映った自分を見据えた。
水色の瞳が、どこか哀しげに映る。
「やるしかないじゃないか」
決意の言葉は硬く、そして強かった。