私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~
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それからまた一時間くらい歩いて、森の中の街道で休憩を取った。
「ふう……」
安堵の息をついて、岩の上に座る。
(足が痛いな)
私はふくらはぎをトントンと軽く叩いた。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい平気です」
心配そうな風間さんに、私は笑いかけた。本当は大丈夫じゃないけど。そんな我が儘は言えない。
風間さんは水吸筒を水筒から取り出して、私のふくらはぎに押し当てた。
「あ、冷たい」
キンキンに冷えているわけじゃないけど、程よい冷たさが気持ち良い。
「ありがとうございます」
お礼を言うと、風間さんはにこりと笑った。そして水吸筒を私に渡して離れる。
チェ……もうちょっと、近くにいて欲しかったな……。せめてイケメンで癒やされたい。いや、バカ。こんなときに、なに考えてんの。
いくらイケメンだからって、相手は私を魔王としか見てない人だって判明したばっかじゃないの。
「ふふっ」
不意の含み笑いに、顔を上げると、風間さんがくすくすと笑っていた。
(え……もしかして?)
「また表情が、くるくると変わっておいででした」
(やっぱりかぁ!)
風間さんは笑いながら、手首を数回捻ってくるくる度合いを表した。
(恥ずかしい!)
私は思わず頬を覆った。
顔は熱いけど、なんだか雰囲気は和んだ気がした。
「そろそろ行けますか?」
「あ、はい」
本当はもうちょっと休憩したかったけど、しょうがない。窺うような風間さんに返事を返して、私は立ち上がった。