御坂くん、溺愛しないで。
「私は、御坂くんにお礼がしたい」
『じゃあ決まりね。明日理玖にお菓子渡す、お礼を言う。逃げてちゃダメだよ?』
「うん…!」
琴葉の言葉に対し、力強く頷いた私。
小学校の時から周りの目を気にして生きてきた私にとって、これは重大な決断である。
このまま周りの目ばかり気にして生きていたら、きっと自分の殻に閉じこもったままで何も変わらない。
それならいっそのこと、勇気を出して前に進めばいいのではないか。
『大丈夫。もし女子に何か言われても、私が仕方なく側にいてあげるから』
「仕方なく…」
わざと落ち込んだ風に呟けば、琴葉がスマホ越しに小さく笑った。
『嘘だって。
私は咲の幼なじみなんだから、ずっと側にいるよ』
「うん、ありがとう」
琴葉と話していたら、先ほどまで悩んでいたことが一瞬のうちに解決されて。
その後は他愛もない話をしていると、気づけば大分時間が経っていた。