御坂くん、溺愛しないで。



慌てて手を離したけれど、また大きく揺れたため勢い余って壁に背中が激突してしまう。


「……いたっ」

「木原先輩、大丈夫ですか?
どうして手を離したんですか、危ないですよ」

「うっ…」


なんだか御坂くんが年上のようだ。
私の失敗を笑わず、むしろ心配してくれている。

少し説教に聞こえなくもないけれど、表情で心配してくれているのだとわかった。


「ほら、俺の袖に掴んでてください」
「でもブレザーがシワに…」

「先輩が背中を打ってしまうよりずっといいですから」


だから掴んでくださいと言われたため、私は御坂くんの優しさに甘えることにした。


「失礼します…」
「どうぞ」

ただブレザーの袖を掴むだけだというのに、今のやりとりがおかしくて思わず笑ってしまう。

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