御坂くん、溺愛しないで。



「すみません、俺は弱いんで。
バスケも興味なくなったんで大丈夫です」


けれど御坂くんの答えはやっぱり同じで。
冷たい声が少し離れた私の耳にまではっきり届いた。

私だけでなく周りにも聞こえたようで、御坂くんの周辺が静かになった。



やっぱり御坂くんの様子がおかしい。

この間も筧くんにバスケ勧誘された時、今のような冷たい声をしていた。


違うのは作り笑いから無表情に変わったことくらいである。



間違いない。
御坂くんには抱えている何かがあるのだと。

明らかに様子がおかしいため、私にはわかる。


パッと琴葉の表情を覗けば、苦しそうに顔を歪めてただじっとふたりの会話を見つめていた。

きっと琴葉も何か知っているのだ。

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