御坂くん、溺愛しないで。




「悪い、俺先に戻ってるから」

これ以上話すつもりはないのだろう、御坂くんは同級生の男の人たちに声をかけた。



「理玖」
「失礼します」

御坂くんは頭を下げたかと思うと、筧くんの呼び止めをスルーして歩き出してしまう。


その時視線を感じたのか、ふと彼が私と琴葉のほうを向いた。


「……っ、木原先輩」
「あ、えっと…」

御坂くんは一瞬気まずそうな顔をして立ち止まったけれど、またすぐ前を向いて歩き出してしまった。


「咲」
「は、はい…!」

「すぐ追いかけて」
「えっ、ど、どうして私?」


追いかけるとしたら絶対に関わりのある琴葉や筧くんが行くべきだ。


「いいから!理玖は私じゃなくてあんたの名前を呼んだんだから、そういうことなの!」


けれどわけがわからぬまま、琴葉に背中を押されてしまう。

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