御坂くん、溺愛しないで。
「もー、髪がボサボサだよ」
「ごめんごめん、咲がかわいかったから」
琴葉は幼い笑顔を浮かべるものだから、逆に何も言えなくなってしまう。
見た目は綺麗な琴葉だけれど、かわいい表情もするのだから男の人にモテモテだ。
本人はそんなことないって言うけれど、鋭い私にはわかる。
「さっ、着いたよ咲!」
「うん…どうしよう、緊張してきた」
琴葉と同じクラスになれたのは中学三年の時だけ。
それ以外はいつも別々のクラスで。
同じクラスになるだなんて奇跡のようなことだったため、今回も諦めていたけれど───
「えっ…!咲、見て!
嘘!やだ、一緒のクラスにふたりの名前ある!」
「ほ、ほんと!?」
私より背が高い琴葉は、掲示板に貼られてあるクラス表が簡単に見えるようで。
私の袖を引っ張りながら嬉しそうな声を上げていた。