御坂くん、溺愛しないで。



「御坂くん、バスケすごかったんだね…」


本人もバスケに打ち込んでいたと言っていたから、相当な努力をしていたのだろうな。

なんせあの真面目な御坂くんのことだ、間違いないという謎の自信を持ってしまう。



「そうよ、だからこそ理玖の上手さに嫉妬するやつがひとりいたの。理玖と同期の男」


琴葉の声のトーンが落ちる。

さらには“嫉妬”という言葉に対して過剰に反応を示してしまう私。


“嫉妬”の怖さは周りより知っているつもりだ。


「ここからは私の後輩から聞いた話なんだけど、理玖たちの引退試合が一週間と迫っていた日に……理玖、怪我を負ったの」


同期の嫉妬、それから怪我。

鈍くない私はなんとなく話の想像がついたけれど、ぎゅっと口を閉じたままにしておいた。

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