御坂くん、溺愛しないで。



「次の日にはスタメンとベンチ入りメンバーの発表、それからユニフォームが渡される大事な日を目前にして負った怪我」


琴葉の話を頭の中で繰り返していると、ぎゅっと胸が苦しくなった。


話を聞いただけの私がこうなのだ、御坂くんはどれほど辛かったのだろう。


苦しかったのだろう。

きっと安易に想像してはいけない辛さ、苦しさだったはずだ。



「勘のいい咲ならもう気づいてると思うけど、理玖はひとりの同期に怪我をさせられたの。

私の後輩ひとりがその状況をたまたま見たらしくて……ミニゲームの時に理玖の背中を勢いよく押しながら、右足を踏んづけていたって」


言葉が出なかった。

背中を押されるだけじゃなくて、足を踏まれていたのなら。


バランスを保てずに、右足に負荷がかかって───

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