御坂くん、溺愛しないで。
さらには体育館から響く声と、ドリブルの音が聞こえてきて。
ふと御坂くんのほうを見れば、少し顔が強張っているような気がした。
「待てよおい!」
「うわっ、やられたぁ!」
賑やかで楽しそうな声。
まだ練習が始まる前なのだろうか。
ここはバスケ部について触れるべきか、触れないべきか。
悩みながら体育館横の道を通っていると、体育館の扉が開いており、そこから中の様子が見えた。
多くの部員が笑いながらボールをついてプレーしており、声同様に楽しそうな表情をしている。
その様子を横目に通り過ぎようとしたけれど───
「……御坂くん?」
ちょうど体育館扉の前で御坂くんが立ち止まった。
その表情は暗く、どこか羨ましげにも見える。