御坂くん、溺愛しないで。



「ずっと逃げてたんです」

ふたりの間に穏やかな空気が流れる中、御坂くんがポツリと本音を呟いた。


「引退試合間近で空気を悪くしたらダメだと言い聞かせながら、本当は怖かった。

仲間に裏切られたと思いたくなくて、本当のことを話したところで味方してくれる相手がいないかもしれないと思えば怖かったんです」



ボールにそっと右手を添えて話し始めた御坂くん。
相当苦しんでいたと、今の言葉でわかった。

やっぱり御坂くんはわかっていた。
仲間に怪我をさせられたのだと。


それから私がそのことを知っていたということも、御坂くんはわかっていたのだろう。

そのため怪我の部分は触れずに話しているのだ。



「だったら変に話さないほうがいい。
わかっていたのに、何で俺がって悔しくて」


ボールに添えた右手をギュッと握り、拳をつくる御坂くん。

悔しくて当然だ。
それも不慮の怪我ではないのだから。

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