御坂くん、溺愛しないで。



「……っ、し、し、真司くん!?」

「じゃあさようなら、先輩。
ここまっすぐ行ったら早く中央体育館に行けますよ」


手の甲にキスをしたことは何も言わず、近道だけを教えて去ってしまう真司くん。


なんて人だ、本当に最低な人。

せめて御坂くんとひと言くらい、言葉を交わせばよかったというのに。


「先輩」

「あっ、御坂くん。
ごめんね、私が迷子になったせいで…」


また御坂くんに名前を呼ばれ、慌てて振り返ったけれど。

どうしてか機嫌を損ねている様子の彼。



「どうして簡単に真司に触れられてるんですか」

「えっ…?あれは不意打ちっていうか、向こうも私をからかうつもりで」

「俺、今すごく腹が立ってます。先輩が他の男に触れられたなんて、イライラしかしません」


慌てて弁解しようとすると、御坂くんにキスをされてしまった左手をぎゅっと握られてしまう。

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