御坂くん、溺愛しないで。



結局連れてこられたのは、この間行ったバスケットゴールのある公園。


ベンチに座るなり、早速…というわけではなく。

『ちょっと待っててください』と言われた私はベンチでじっと待っていた。


数分ほど経ち、御坂くんが帰ってきたと思うと手にはペットボトルのジュースがふたつあり、そのどちらとも私の前に差し出される。


「こっちが炭酸飲料で、こっちがリンゴのジュースです。どっち飲みますか?」

「あ…」


ちょうど良かった。
緊張で喉が渇いていたところである。


「じゃあリンゴジュースで」
「リンゴですね、はい」

「ありがとう。あっ、お金…」
「そんなのいりませんよ」

「いや、それは悪いよ…!」

「じゃあ先輩が応援に来てくれたお礼ってことにしましょう。それだけじゃ全然足りませんが…」


ううん、これで十分である。
だって御坂くんは今度、デートしてくれるのだ。

十分すぎるくらいに寂しさを埋めてもらっているし、応援だって自分の意思で行った。


それなのに丁寧にお返しまでしようとする律儀な人である。

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