御坂くん、溺愛しないで。



そんな中、頬に触れられている御坂くんの右手が動く。

私の髪を耳にかける動作をしたのだ。


なんとなくわかった。
キス、というものをされるんじゃないかって。

けれどもう最大限の緊張を味わったのだ。
この先なんでも平気な気がする。


御坂くんも同じなのだろうか、私を見て穏やかに笑っていて。

私も同じように笑い返す。


それから御坂くんがゆっくりと近づいてきて、何も知らない私は目を閉じることしかできなかった。

少しして重なり合う唇。


そっと重ねられた唇は、割れ物を扱うかのような優しいキスで。


お互い慣れていないためか、すぐに離れて見つめ合う。


最初は互いに口を開かず、じっと見つめていた。

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