御坂くん、溺愛しないで。
逆に私、木原 咲(きはら さき)は真っ黒なセミロングの髪を少しアイロンで伸ばした程度でメイクも一切せず、今日を迎えた。
だってメイクをすれば、少なくとも自分の顔がマシに見えてしまう。
そうなれば目立ってしまう恐れがあるのだ。
「咲、結局今日もおとなしいね」
おとなしい、とは恐らく格好のことを言っているのだろうけれど。
私は絶対にメイクなんてしない、地味な女を貫き通すんだと決めている。
「私はこれでいいの」
「いい加減、男子と絡めばいいのに。今だって地味だと思ってるだろうけど、あんたかわいくて目立ってるからね?」
「そ、そんなわけない!」
琴葉は何を言いだすんだ。
慌てて首を横に振り、全力で否定する。