御坂くん、溺愛しないで。
「だから理玖が適任なの。
それに気絶した後は大丈夫だったんでしょ?」
「そ、そうだけど…」
いや、正確には泣いて逃げ出した後が大丈夫だったけれど。
話せば長くなりそうだったから何も言わないでおいた。
「じゃあ一歩前進じゃん!
やったね咲」
「喜べないよ…」
「えー、どうして」
昨日のことを思い返せば、嬉しいなんかより申し訳ない気持ちしか抱かないのだ。
「ま、安心しなよ?
理玖は嫌だなんて思ってないみたいだし」
「え…?」
「まあすぐにわかるよ」
そう言ってニヤッと笑みを浮かべる琴葉を見て、嫌な予感がした。
けれどその時はまだ、琴葉の言っている意味がわかるはずもなく。
結局その意味がわかるのは、家からの最寄り駅に着いた時だった。