御坂くん、溺愛しないで。
たったそれだけだというのに、肩がビクッと跳ねてしまい、パッと御坂くんから目を背けてしまう私。
おかしい、どうしてだろう。
昨日の今日だというのに、またあの恐怖心が戻っていたのだ。
「……咲」
自分でもわからないでいると、いつもよりトーンを落とした声で琴葉に名前を呼ばれる。
それに対してもビクッとしてしまった。
「あんた、何私の背中に隠れてんの?
理玖に『おはよう』くらい言いなさい」
「む、無理…」
思わずぎゅっと琴葉のブレザーの袖を掴んでしまう。
「ちょっと、シワになるからダメ!
隠れるのもダメ!」
「あっ…」
もちろん強引な琴葉のことだ、許してくれるはずもなく。
私の手を払ったかと思うと、先に御坂くんのところへと行ってしまった。