御坂くん、溺愛しないで。



たったそれだけだというのに、肩がビクッと跳ねてしまい、パッと御坂くんから目を背けてしまう私。


おかしい、どうしてだろう。

昨日の今日だというのに、またあの恐怖心が戻っていたのだ。


「……咲」

自分でもわからないでいると、いつもよりトーンを落とした声で琴葉に名前を呼ばれる。

それに対してもビクッとしてしまった。


「あんた、何私の背中に隠れてんの?
理玖に『おはよう』くらい言いなさい」

「む、無理…」


思わずぎゅっと琴葉のブレザーの袖を掴んでしまう。



「ちょっと、シワになるからダメ!
隠れるのもダメ!」

「あっ…」


もちろん強引な琴葉のことだ、許してくれるはずもなく。

私の手を払ったかと思うと、先に御坂くんのところへと行ってしまった。

< 80 / 345 >

この作品をシェア

pagetop