御坂くん、溺愛しないで。



急な展開に頭がついていかず、真っ白になってしまう。

言葉を失い、ただ呆然と走り出す電車を見つめることしかできなかった。


朝の電車は、昨日の帰りなんかよりも人が多い。
それなのに御坂くんとふたりで行けというの?

無理だ、今だって御坂くんに近づくことすら叶わないというのに。


「木原先輩」
「……ひっ」


半泣きになっていると御坂くんに名前を呼ばれ、怯えた声が出てしまう。

本当に無意識なのだからどうしようもない。


「そんなに俺、怖いですか?昨日、先輩と近づけたと思ったんですけど…残念です」


御坂くんの言葉が胸に刺さり、苦しくなる。
その通りだ。

昨日の進歩はどこへ行ったのだ。

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