御坂くん、溺愛しないで。



「先輩は昨日、頑張ってました。
それなのに嫌になるだなんて絶対ないです」


揺れない瞳は真っ直ぐ私を見つめている。
きっと嘘じゃない。

御坂くんは本気でそう思ってくれているのだ。


「御坂くん……ありがとう」

ほら、やっぱり彼に対して出てくるのは感謝の言葉である。



「もう大丈夫ですか?」
「えっ」

「俺のこと、怖くないですか?」
「あ、それはもう、大丈夫です」


思わず敬語になり、コクコクと何度も頷く私。
すると御坂くんは目を細め、嬉しそうに笑ってくれた。


「そうですか、良かったです。また一からやり直しだったらどうしようと思いました」

「ご、ごめんなさい…それは、本当に」


私だって自分を恨みたくなる。

昨日は触れるところまで成功したのに、どうしてまたダメになっているんだって。


けれどまた御坂くんのおかげで大丈夫になったのだから、今度こそ彼のことは平気になったと言い切りたいと思った。

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