恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
災難も幸せも、すぐそこに転がっている。

過去

いつもより時間がかかったミーティングの後、課長に呼び止められ、結局10時過ぎに病院を後にした。

歩いて20分ほどのマンションへ向かう道。
街中だけあって明るくて治安が悪い場所ではないけれど、さすがにこの時間は人通りもない。

ん?
しばらく歩いたところで、後ろからついてくる足音に気づいた。
ヤダ、怖い。
それでも振り返ることができない。

少し早足になって、
ええ?
ついてくる足音も早くなった。

私は駆け出した。

このままマンションまで走ってしまおうか、
それとも、近くのコンビニへ、
まずはボスに電話を、
頭の中が混乱したまま、必死に走った。

このまま消えてくれるといいなとそれだけを思って。

しかし、
「待てよ」
急に背後から肩をつかまれた。

こ、この声を、私は知っている。

「久しぶりだな、茉穂」

お願いやめて。
思い出したくない。
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