恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
その日から、実家での引きこもり生活。
5年前と何も変わらない。
進歩のない私。


「仕事は?やめたのか?」
父さんは相変わらず厳しい。
地元の市役所に勤める公務員である父さんは、真面目で堅物。
小さい頃から厳しく育てられた。

「仕事なんて面白くないことばかりなんだ。それを、半年やそこらで逃出してどうする」
確かにそうだね。

昔から、父さんはそうだった。
小学生で不登校になった私に、「学校に行け。それがお前の仕事だ」と怒鳴った。
高校時代、いじめられ、傷つき、手首を切った私に、「何でお前はいつもそうなんだ」と悲しそうな目を向けた。
私はあの時の、父さんの顔を一生忘れない。

「いいじゃないですか、茉穂が決めたことですから」
母さんはいつもかばってくれる。


「父さんの言うことなんて気にすることないのよ。あれでも心配なのよ」
「うん」
大丈夫。父さんが不器用なだけだって、今は理解しているから。

そして、
男の人はみんな不器用だってことも。
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