恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
病院近くの居酒屋で行われた親睦会という名の飲み会。

同期や研修医の15人ほどが参加した。
普段は行き来のないメンバーでも同期というだけで親近感があり、上司の愚痴や失敗談で大いに盛り上がった。

「いいなあ、茉穂ちゃん。副院長と一緒に仕事ができるなんて羨ましい」
「ほんと、副院長かっこいいよね」
なぜだろう、みんながうらやましがる。

「そんなことないよ」
本当に大変なんだから。

「お疲れさま」
「ああ、先輩。お疲れ様です」
いつの間にか隣の席にやってきた橘先生。

ん?
じっと見てる。

「何か?」
「もしかして、今日は来ないかなって思っていた」
「どうしてですか?」
「副院長に、聞かれたんだ」
「何を?」
「この間のパーティーで、並木を連れ出したかって」
あーぁ、ボスったら。

「それで、なんて答えたんですか?」
「正直に答えたよ。お茶をして、カラオケに行きましたってね」
「それでボスは?」
「ボス?」
「ああ、あの、副院長はなんて?」
「仕事で連絡が取りたかったのに、電話がつながらなくて心配した。もう少し早く帰すようにって」
「・・・すみません」

先輩は何も悪くないのに、私のせいで申し訳ない。

「いや、俺も悪かった。この間のパーティーは半分仕事みたいなものだったから、もう少し気を使うべきだったかもしれない」
「そんなことありません」

落ち込んでしまった気持ちを持ち上げるように、私は目の前のグラスを一気に空けた。
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