恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
久しぶりに同年代と飲むのは楽しかった。
今まで話せなかった人たちとも話ができたし、いい気分転換にもなった。

「じゃあ、お疲れ様」
店を出たところで、何人かはタクシーに乗り込む。

「茉穂ちゃん、この後女の子だけで飲みに行くんだけど一緒に行こうよ。明日休みでしょ?」
「ええ、まあ」

「いや、そろそろ帰ったほうがいいんじゃないか?」
先輩が横から口をはさんでくる。

あれ?
どうしたんだろう。

その時、
ブブブ。
携帯の着信。

あ、ボスからだ。

「もしもし」
『何やってるんだ、11時半だぞ』
「だから、」

昨日朝帰りした人には言われたくない。
言葉にこそしなかったけれど、不満が態度に出てしまった。

『右側5メートル先』
「はあ?」
言われた通り右手の5メートルほど先を見ると、

うわわわ、ボスの車。
なんで?

『帰るぞ、早く来い』
いや、でも。

「茉穂ちゃん、行こう」
「ぅ、うん」

『迎えに行こうか?』
「待ってください」
そんなことされたら大騒ぎになる。

「茉穂ちゃん?」
焦っている私に、大丈夫?って顔をされている。

「ごめん、今日は帰るわ」
せっかく誘ってくれたのにって思いながら、断るしかない。

『早く来い』
と、ボスの電話は切れた。

「ごめん、並木」
申し訳なさそうに、頭を下げている橘先生。

「先輩?」
「さっき電話があって、俺がここを教えた」
なるほど、そういうことか。

「いいんです。先輩は悪くありませんから」

悪いのは・・・私かな。
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