素直になれたら
2.現実は厳しくて
○1年後

○「MIKASA net TV」・制作部・中

雑然とした室内。殺気立ったスタッフ達。
現れた相田、デスクでパソコン作業をしている心菜を見るなり怒り顔で、

相田「井藤!『MIKASAの部屋』の編集、いつまで時間かかってんだ!今日中には終わるんだろうな!?」

心菜「は、はいいっっ・・・!」

心菜(もう、やだーっ・・・!!)

心菜、泣きそうな顔でキーボードをたたき続ける。 

心菜(あの、『MIKASA net TV』に運命を感じてしまった日から約1年。
私は今、『MIKASA net TV』の制作部社員として多忙な日々を送っている。

あああ、けど、こんなはずじゃなかったのに・・・!)

心菜、涙を浮かべて1年前を思い出す。

○(回想)

1年ちょっと前の6月。
ノートパソコンを開き、「MIKASA net TV」のエントリーボタンを押す心菜の姿。

心菜(『MIKASA net TV』に運命を感じたあの日。
浅はかにも、私はすぐに社員募集のエントリーボタンを押してしまった。

それからまもなく連絡が来て、中途採用の面接を受けた。
その際、私が「なないろベーカリー」の取材時にいた人物だということがわかると、「あの時の!」と、番組を見て感動したという社長がすぐさま採用してくれた。

勤めていた「すずめ製菓」には、退職希望と、「MIKASA net TV」に受かったことを報告すると、「残念だけど」と、でも、「華やかな世界で素敵だね!」と、再就職を祝ってくれた。
「井藤さんは若いし、今のうちにやりたいことはなんでもやるといいよ!」と言ってくれた社長には、もう感謝しかない。
   
「仕事で落ち込んだら、『すずめ製菓』のお菓子を食べてね」

なんて言ってくれたりもして。
おかげで、「すずめ製菓」は円満に退職することができた。
本当に、いい会社だった。
私はそれを、転職してから3ヶ月の今、嫌というほど痛感している。

○(回想終わり)

○「MIKASA net TV」・制作部・中

デスクで思いにふける心菜。
相田、心菜をにらみつけ、

相田「井藤!!てめえ、なにぼーっとしてるんだ!!手が止まってんぞ!手が!!」

背後から相田の声がして、心菜はビクッと肩を動かす。

心菜「は、はいっ!!すみません!!ただいま!!う、動かします!!」

心菜、目を回しながら画面をにらんでキーボードを懸命にたたき始める。

心菜(予想外!想定外!!
キラキラする暇なんてない。

ケーブルテレビが、こんなに大変な仕事だなんて・・・。
いや!相田さんが、こんなに厳しい人だったなんて、確実に予想外だったんだけど!!)
      
心菜、ぐったりとした顔をする。
   
人々が働く仕事現場の様子。
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