素直になれたら
○「MIKASA net TV」制作部・中

雑然としている相田のデスク。
自席に座っている相田の横で、呆然とした様子で立ち尽くしている心菜。

心菜「え・・・今、なんと・・・?」

相田「だから。滝山のばあちゃんが昨日の夜亡くなったんだ。で、今日から忌引きに入るから。明日からの研修は、オレとおまえと二人で行くことになった」

心菜「・・・」

心菜(えーーーーーーっ!!!)

心菜、真っ青な顔になる。

心菜(そう。明日から、私と真生子ちゃんは、東京のテレビ局に二泊三日の新人研修に行く予定になっていた。
様々な機材の取り扱いや、大きなテレビ局の現場を見るのが目的で、新人は毎年、9月に行くことになっている。

そう、だから、あくまでも、新人対象の研修なはずで・・・)

心菜「それなら私、一人だけで大丈夫です!私一人で行ってきます!!」

心菜(真生子ちゃんがいなくても、私一人で大丈夫だし!!
っていうか、相田さんと二人より、一人の方が絶対いいし!!)

「そうしてください!」と説得するような目で訴える心菜。
相田は動じず無表情で、

相田「いや、オレも行きたいんだ。東京のテレビ局に行けるのは久しぶりだし。今の現場を見てみたい」

心菜「え」

相田「経費が下りるの二人分だし。切符ももう買ってある。幸いオレは、今は仕事が落ち着いてるから。行きたいから行く」

心菜「・・・」

心菜(えーーーーーーーーっ!!)

青ざめる心菜。相田がにらむ。

相田「なんだその嫌そうな顔は」

心菜「い、い、いえ!」

相田「じゃあ決まりだ。明日朝7時に名古屋駅の太閤通口。銀の時計前。遅れんじゃねえぞ」

心菜「は、はい・・・」

心菜(サイアクだ・・・)

絶望の顔をする心菜。

心菜(新人研修は、密かに楽しみにしていた。東京っていうのもワクワクするし、真生子ちゃんと二人だから、気がねしないで旅行気分でいたんだけれど・・・。

それなのに、まさか、まさか・・・)

淡々と仕事を再開する相田を、チラリと見る心菜。
真面目で厳しそうな横顔。

心菜(鬼研修だ。旅行じゃなくて、鬼研修だ・・・)

心菜、がっくりとした表情でその場を立ち去る。




   
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