素直になれたら
○居酒屋・中(夜)

満席で賑わっている店内。年季が入っている雰囲気。年配の男性客が多い。
心菜と相田、畳の座卓で向かい合って座っている。
相田の前には生ビール。心菜の前にはウーロン茶。

心菜(普段だったら、私だってビールだけどさ。
今飲んだりしたら、絶対に明日起きられない自信があるもん・・・。

だけど、相田さんはさっきからゴクゴク飲んでいる。
相田さんとは、私と真生子ちゃんの歓迎会の時に一度だけ、一緒に飲んだ記憶はあるけれど、私はとても緊張してたし、相田さんがお酒が強かったかどうかの記憶はない。

けど、強いみたいだね・・・)
   
ジョッキを空にして、もう一杯注文をする相田の姿を見る心菜。
相田の顔色は全く変わっていない。
相田は心菜のことを見る。

相田「・・・さっきからウーロン茶ばっかり飲んでるけど。食わないの?」
   
テーブルには、枝豆や煮魚、お刺身などが並んでいる。
心菜、「はあ」と返事して、
 
心菜「少しだけいただきました。あんまり食欲ないので・・・」

心菜(それに、とにかく怖すぎる・・・。

疲れに加え、相田さんが目の前にいるという緊張感。
しかも二人きりの飲み。
いや、私はウーロン茶だけど・・・。
とにかく、疲れと緊張で食欲はゼロに等しい)

相田「疲れたか」

窺うように心菜を見る相田。
心菜は悩むような顔をする。

心菜(電話でそう言いましたけども・・・)

心菜「はい。あの・・・かなり・・・ぐったりです」

心菜(だから、早く帰してください・・・。
帰りましょう、明日に備えて)

そんな思いを込めて、素直な気持ちを伝えた心菜。
相田は心菜をじっと見る。

相田「そうか。じゃあ、早く食って早く帰って早く寝ろ。飯食いに行って疲れて明日動けないとか、本気でシャレになんねえぞ」

心菜(む!だから、コンビニでいいって言ったのに~!!)
   
心菜、むっとしながら頷いて、腹をくくった様子でお刺身に箸をのばす。
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