素直になれたら
ドアに寄りかかり、額に手を当てている相田。
心菜は戸惑いながらも、平然を装うように、

心菜「え、えっと・・・ところでここ、どこでしょうね」

心菜(慌ててたから、駅名を見ずにデッキに急いで出てきてしまった。
   今ここから外を見ても、真っ暗でよくわからない・・・)

相田「・・・岡山」

心菜「おか・・・へっ!?」

心菜(岡山!?)

心菜「な・・・え、本気で」

相田「本気だ。さっきの女の人の切符、岡山から小倉行きだった」

心菜「え・・・じゃあ、今ここは・・・」

相田「わかんないけど。これ『のぞみ』だから、多分、広島までは止まらない」

心菜「え、えーーーーっ!?」

大声を出し、驚愕の表情になる心菜。
相田はますます落ち込んだ様子になる。

相田「ここまで乗り過ごすって。京都も大阪も止まったはずだろ。なのに、今まであの席に座ってくる人いなかったのか・・・」

心菜は少し考えて、

心菜「そ、そうですね。いなかったか・・・もしくは、私たちが熟睡してて起きなくて、自由席に行ってくれたとか・・・」

おずおずと告げる心菜。
相田は、悔しそうにドン!とドアをたたく。

相田「・・・あり得る。今日は自由席ががら空きだった」

心菜「・・・」

心菜(車掌さんにも声をかけられなかったし・・・。こんなことあるんだな・・・)

無言で考え込む心菜と相田。
しばらくすると、相田は気を取り直したように、

相田「ここにずっと立ってんのもキツいだろ。自由席に移動しよう。名古屋からの新幹線代はオレが出す」

心菜「え、でもそれは」

相田「いいから。行くぞ」

突然、いつもの表情に戻った相田。
戸惑う心菜をずるずると引っ張って移動する。
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