薔薇の棘の痛みにキスを、あなたとの日々へ花束を
家に着くと、弟が駆け寄ってきた。

「兄さん!」
「宗。話があるんだ。俺の部屋に来て」
「話…? わかった」

俺と弟は向かい合って座った。

どこから話せばいいのかわからない。

弟は信じてくれるだろうか。

「宗。薔子は助からないそうだ。でも、一つだけ救う方法がある」
「それは?」
「悪魔に魂を売ること」
「え!?」
「宗の中には悪魔の力が眠っている」
「僕が、悪魔…?」

俺は、普通の人には視えないものが視えること。
宗介の中に悪魔の力が眠っていることがどうしてわかるのか。
その力はどういうものなのか。

弟に詳しく説明した。

はじめは理解できないと言っていたけど、なんとか受け入れてくれた。

「今から苦しくなるけど、我慢してくれるか?」
「うん。兄さんと薔子ちゃんのためなら我慢できるよ」
「ありがとう。それじゃあ、始めるぞ」

じいちゃんが用意してくれた紙を見ながら、悪魔を呼び寄せる。

弟は苦しそうにもがいていたが、やがて動きが止まり「私を呼んだのはお前か」と、太く低い声で俺に問いかけた。
そこにいるのは弟の姿をした悪魔だった。
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