独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
序章 優秀な彼女の失態

 遠くから、ギターの弦を優しくかき鳴らす音が聞こえる。深い眠りから私の意識をすくい上げるのは、聞き慣れた目覚まし用のストラムだ。

 ナイトテーブルに手を伸ばし、携帯のアラームを止めた。

 今日は土曜だから、もうひと眠りできる。

 どことなく気だるさを感じながら体の向きを変えたところで、ぎょっとした。

 すぐ隣に、人が寝ている。

 慌てて身を起こした拍子に隠れていた自分の体があらわになり、とっさに布団を引き上げた。

 待って。

 待って、待って。

 誰に懇願しているのかわからないまま、心の中で「ちょっと待って」と繰り返す。

 なんで私、裸なの。

 しかも隣に寝ているのは……。

 壁の方を向いて寝息を立てている端正な顔には、見覚えがあった。いや、見覚えどころの話じゃない。
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