独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
お財布を用意しながら、美女と並んで立っていた香坂先生を思い浮かべた。
『俺のフィアンセの――』
その言葉は冗談だったにしても、あんなふうに自分の恋人をまっすぐ紹介する彼は、やっぱりとてもかっこよかった。
そして紹介された彼女の方も、心に一点の曇りもないまま彼のとなりに立っていたにちがいない。
それは正しい恋人同士の在り方だ。
隠したり隠れたり、相手の気持ちを疑いながら関係を続けるなんて、やっぱりまともじゃないよね……。
会計を済ませ、ビルの狭い階段をゆっくり下りる。壁にもたれながらずるずる体を引きずるようにして表に出ると、風が生温かった。
アルコールの匂いがするため息が、夜の空気に混ざる。